はじめに
アダルトサイトを運営する場合、様々な法律や規制に注意しなければなりません。
特に、著作権や肖像権、児童ポルノの禁止など、コンテンツの内容や配信方法に関する規定は厳しく、違反すれば刑事罰や民事訴訟の対象となる可能性があります。
日本だと無修正動画・画像に関する逮捕者も多くいますので、特に気を付ける必要があります。
2022年6月には、AV(アダルトビデオ)出演者の保護を目的とした法律「AV出演被害防止・救済法」(通称「AV新法」)が新たに制定されました。
法律は日々変化していますので、アダルトサイト運営者は常に目を光らせておく必要があります。
本記事では、アダルトサイト運営に関する実際の逮捕事例を紹介し、法律遵守の重要性を説明します。
アダルトサイト運営で該当する可能性のある法律
こちらに上げている法律はアダルトサイトを運営する上で注意する代表例です。
正しい法律とその解釈について詳しく知りたい方は、弁護士サイトなどを別途ご覧ください。
著作権法違反
著作権者の許可を得ずに、著作物を無断で使用、複製、配布、改変、公衆送信することは、知らずに使用したとしても著作権法違反となります。
アダルトサイトでは、販売されているアダルトビデオの違法配布、AV女優の画像の無許可使用(アフィリエイトで許可されている場合は問題ありません)、著名人の画像を勝手に使用などが該当します。
また、漫画や動画の海賊版そのものは掲載していないものの、海賊版コンテンツと知っていながらリンクを載せることで、利用者を誘導する「リーチサイト」も違法です。
文化庁は「リーチサイト」が著作権侵害を助長すると問題視しており、2020年10月に施行された改正著作権法には、「リーチサイト」の運営者への刑事罰が盛り込まれました。
違法アップロードされた動画には関わらず、画像も各ASPで許可されているものや、フリー素材(商用利用可)を使用するようにしましょう。
法令
著作権法 第119条
1項 著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者は、10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
該当例
- 無許可で他者の画像をアダルトサイトに掲載する
- 販売されているアダルト動画・画像を違法アップロードする
- サンプル動画と呼称して違法入手したアダルト動画を掲載する
- 海賊版コンテンツを掲載しているサイトへ多数のリンクを貼るサイト(リーチサイト)を運営する
わいせつ物頒布等罪
わいせつな内容の性的な画像、文書、映像、音声などを頒布、販売、公然と陳列、送信、頒布目的で製造・保管するなど、公共の場で流通させる行為を禁止する法律に基づく罪状のことを指します。
わいせつ物とは、最高裁判所で「その内容がいたずらに性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する」ものと定義されています。
しかし、どの程度のものがわいせつ物なのか(芸術作品であればセーフなど)の判断基準は非常にあいまいです。
代表的な判例では「わいせつか否かの判断は法解釈の問題であり、一般社会において行われている良識、すなわち社会通念に従って判断すべきものである」としています。
アダルトサイトでは、主に無修正動画・画像などが該当します。
基本的に自己サイトで無修正動画・画像を使用することはやめておくのが良いでしょう。
本人がわいせつ物ではないと思っていても捜査の対象となるケースもあるため、注意する必要があります。
法令
刑法 第175条
1項 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、2年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
2項 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。
該当例
- 無修正のアダルト動画をサイトにアップロードする
- 無修正のアダルト動画をインターネットに公開・販売する
- 故意に無修正のアダルト動画リンクを多数掲載する
公然わいせつ罪
不特定多数が視認し得る場、または公共の場でわいせつな行為を公然と行うことを禁止する法律に基づく罪状のことを指します。
アダルトサイトを運営する上で、こちらの刑法に違反することはほとんどありません。
違反することがあるとすれば、「自分で配信サイト・ライブチャットでわいせつ行為を配信する」などです。
法令
刑法 第174条
公然とわいせつな行為をした者は、6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
該当例
児童ポルノ禁止法
児童ポルノ禁止法は、未成年者(児童)に関わる性的な表現や画像を製造、配布、所持することを禁止する法律です。
これは児童の権利を保護し、児童を性的搾取や虐待から守るために制定されています。
児童ポルノ禁止法は、多くの国で法制化されており、違反者には厳しい刑罰が科されます。
アダルトサイトでは、児童ポルノ禁止法違反(所持、提供、配布)などすべてに該当する可能性があります。
未成年者(児童)が関わっている動画・画像には一切手を触れないでおきましょう。
法令
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律 第7条
1項 自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
自己の性的好奇心を満たす目的で、第2条第3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管した者も、同様とする。
2項 児童ポルノを提供した者は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する。
電気通信回線を通じて第2条第3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
3項 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。
同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
4項 前項に規定するもののほか、児童に第2条第3項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第2項と同様とする。
5項 前2項に規定するもののほか、ひそかに第2条第3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第2項と同様とする。
6項 児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
電気通信回線を通じて第2条第3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
7項 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。
同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
8項 第6項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、同項と同様とする。
該当例
- 未成年のわいせつ動画・画像をPCに保存する
- 未成年のわいせつ動画・画像をサイトにアップロードする
- 未成年のわいせつ動画・画像をインターネットに公開・販売する
- 未成年とみだらな行為(またそれを録画)をする
アダルトサイト運営に関係してくる代表的な法律は主にこの4つになります。
他にも最近制定された「AV出演被害防止・救済法」(通称「AV新法」)がありますが、そちらはアダルトビデオを作成する側と出演者に関する法律です。
詳しく知りたい方は下記をご覧ください。
違法アダルトコンテンツによる実際の逮捕例
わいせつ物頒布等罪
2023/06/30
ツイッターで無修正動画販売 逮捕21歳女の実名&顔出しは見せしめ効果抜群だった
無修正動画をツイッターで販売したとして会社員の21歳女が6月末にわいせつ電磁的記録送信頒布などの疑いで逮捕された。女は自分で自分のわいせつな動画を撮影して販売し、約170万円を売り上げていた。
https://www.tokyo-sports.co.jp/articles/-/268727
2022/05/19
サイト「FC2」で販売ランク3位の男を逮捕 無修正動画陳列容疑
自作の無修正のアダルト動画を米国の動画販売サイト「FC2コンテンツマーケット」で売ったとして、警視庁は無職の男(43)=東京都新宿区=をわいせつ電磁的記録記録媒体陳列容疑で逮捕し、19日発表した。男のアカウントによる売り上げは今年5月までの1年7カ月で約2億9400万円に上り、昨年はFC2全体の年間ランキングで3位だった。
https://www.asahi.com/articles/ASQ5M3JX7Q5MUTIL00B.html
2021/11/22
FC2でのわいせつ動画配信で7人が逮捕へ。合計4億7000万円を売り上げ
アダルトサイト「FC2」でわいせつ動画を公開したとして逮捕が相次いでいる。各報道によれば、逮捕されたのは映像制作会社社長の福田茂人容疑者、海上自衛隊員の星将人容疑者、国立産業技術総合研究所の主任研究員・山下崇博容疑者、無職の柴田恒一容疑者などの名前が挙がっている。TBS NEWSの記事によれば逮捕された7人はおよそ4億7000万円を売り上げていたという。またNHKの記事によれば、福田容疑者はSNSなどで女性を募集し報酬を支払って撮影。サイトへの投稿を代行するオランダの業者に販売し、2年間で8000万円以上を売り上げていたとしている。
https://it.srad.jp/story/21/11/21/1924203/
2017/03/12
無修正「カリビアンコム」運営、米国籍男性の逮捕…なぜ困難な摘発が実現できた?
アダルト動画サイト「カリビアンコム」で、無修正のわいせつ動画を配信したとして、サイトを運営するグループの社員で、アメリカ国籍の男性が3月上旬、わいせつ電磁的記録等送信配布の疑いで逮捕された。
https://www.bengo4.com/c_23/n_5834/
2015/11/26
違法アダルト広告摘発、海外サーバー利用 全国で13人逮捕
18都道府県警が海外サーバーを利用した違法なアダルト広告宣伝サイトの一斉取り締まりを25日に実施したと発表した。捜索は66カ所で、10都道府県警がわいせつ電磁的記録媒体陳列の疑いでサイト管理者ら13人を逮捕した。
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG26H9C_W5A121C1CC1000/
2015/09/04
わいせつ動画配信事件で「FC2」創設者に逮捕状 「国際海空港手配」とはなにか?
ネットの動画サイト「FC2」のわいせつ動画配信事件で、サイト創設者の40代男性が事件に関与した疑いが強まったとして、京都府警はわいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪の疑いで男性の逮捕状を取った。男性はアメリカ国籍を取得し、アメリカに在住しているとみられており、警察は「国際海空港手配」の手続をしたという。
https://www.bengo4.com/c_1009/n_3636/
公然わいせつ罪
2019/08/05
FC2動画でわいせつ行為をライブ配信~福岡市内の会社経営者らを再逮捕
福岡県警は8月5日、ライブ動画配信サイト「FC2動画」を利用し、わいせつな動画をライブ配信したとして、福岡市の動画配信会社経営・西田直人容疑者(42)と、同市内に住む無職・金岡徹也容疑者(47)を再逮捕、久留米市の会社経営・中村晴美容疑者(54)を逮捕した。
https://www.data-max.co.jp/article/30841
2014/06/03
性行為ライブ配信で逮捕、「FC2なので大丈夫だと…」「海外サーバーはセーフ」の大誤解
わいせつ行為のライブ配信で、全国で初めて現行犯が逮捕された。2014年6月3日、性行為の様子を配信していたとして、大阪市北区豊崎の自称ライブチャット配信業の松本隆志容疑者(30)と兵庫県宝塚市の短大生の女(19)が、公然わいせつの疑いで京都府警により現行犯逮捕された。
https://www.j-cast.com/2014/06/05206876.html?p=all
特にこれからアダルトサイト運営をしていく方が気を付けてほしいのは、「著作権法違反」の「リーチサイト」についてです。
著作権法が2020年に改正され、今までグレーゾーンであった海賊版コンテンツへのリンクサイト「リーチサイト」も違法性を認める方向に変更されました。
今でもインターネットには「リーチサイト」が溢れていますが、逮捕一歩手前なのだということを自覚して作成しないようにしてください。
逮捕事例に倣う法令順守の重要性
逮捕の事例をいくつか紹介しましたが、違法なコンテンツの提供や違法な手法でのアダルトサイトの運営は、深刻な法的問題を引き起こします。
実際逮捕された人は「海外サーバーだから大丈夫と思った」「違法だと知らなかった」などを供述していますが、いくら言い訳を並べたところで罪は軽くなりませんし、なくなりません。
法令順守を徹底して合法的な運営を心がけることは、自身のためであり、アダルトサイト運営者としての最も基本的かつ重要な責務であると言えます。
それは法的リスクを回避するだけでなく、利用者との信頼関係を築き、サイト運営の安定性を確保する要因ともなります。
後悔しないためにも法律を遵守し、逮捕事例から学び、健全なサイトを運営することを心掛けましょう。
まとめ
アダルトコンテンツは、インターネット上で広く利用されている人気コンテンツですが、それゆえに様々な法的リスクにも晒されます。
そのコンテンツを用いてのサイト運営は、一般コンテンツより莫大な利益を得ることができる方法であることは間違いありません。
しかし、違法性のあるサイトを運営して逮捕されれば、刑事罰や民事訴訟だけでなく、社会的信用の失墜してしまい人生が終わってしまうといっても過言ではありません。
また、違法アダルトコンテンツによる逮捕は、検挙する手が足りていないのが実情だと思います。
いまだに数多くの違法サイトが検索エンジン上位に表示されているのを見てもわかります。
しかしそれは、規模・被害が大きい事案から検挙しているだけであり、例え小規模であろうが違法性が消えることはありません。
もし違法サイトを運営しているとしたら次に逮捕されるのはあなた自身であるかもしれません。
この記事が違法コンテンツの是正、健全なサイト運営に変える機会になれば幸いです。
最後に「法令順守はアダルトサイト運営者の責任と義務」です。
そのことを忘れず健全なアダルトサイトを運営しましょう。